2008年

“島田俊郎先生記念 JSD CONFERENCE 2008” 開催案内” 

                                                                                   2008年5月12日

JSDカンファレンス準備委員会

期日:2008年5月31日(土) 13時~17時30分
受付開始 12時30分
JSD総会を開催 17時00分~17時30分

場所:学習院大学 南3号館 104室
http://www.gakushuin.ac.jp/mejiro.html

主催:システム・ダイナミックス学会日本支部(JSD)

参加費:JSD会員は無料。

JSD会員以外の参加者は、1000円の資料代を、

受付でお支払ください。

申込先:jsd-conf-2008@yahoogroups.jp

申込内容:件名=JSD
①名前
②所属
③郵便番号

④e-mail
⑤JSD会員(Yes/No)
⑥本情報の入手源(  )

 

講演案内:

2007年からJSDカンファレンスを毎年開催することにいたしましたが、今年度は昨年3月31日にご逝去された本会の生みの親であり、初代の会長として本会の礎を築いていただいた島田俊郎先生を記念して、カンファレンスを開催することになりました。

以下に記します経営分野、政策分野、SD/ST分野の6編の論文を発表します。

ご出席には会員資格の有無を問いませんので、上記の宛先にお申込みいただき、皆様お誘いあわせの上、ご出席いただきますようご案内申し上げます。皆様方のご来場をお待ちしています。

プログラム:

13:00-13:10 JSD会長挨拶
森田道也(学習院大学)

13:10-13:45 成熟市場におけるイノベーションによる成長の限界打破のモデル
近藤史人(日本ヒューレットパッカード株式会社)

13:45-14:20 プロセスマネジメントによる販売の効率化

小池昇司(RICOH ELEMEX CORPORATION)

14:20-14:55 CO2削減インセンティブプログラムのシミュレーションモデルの開発

堀野 聡(日本ヒューレットパッカード株式会社)

15:05-15:40 反少子化戦略に関するSD人口モデルの意義と政策科学への貢献

小林秀徳(中央大学)

15:40-16:15 寿命分布を伴うストックとフローへのシステム・ダイナミックスモデルの適用

重野芳人(東北大学)、秦燕春(東北大学)

16:15-16:50 日本におけるSD研究と新しい方向性の考察

末武透(日本未来研究センター)、池田誠(東洋大学)、中村州男(NPO情報化ユートピア)

17:00-17:30 JSD総会

以上

“島田俊郎先生記念 JSD CONFERENCE 2008”

発表論文の概要

 

1.経営分野

成熟市場におけるイノベーションによる成長の限界打破のモデル

近藤史人(日本ヒューレットパッカード株式会社)

目的と概要:ハイテク市場などに見られる成熟した市場は、新製品・サービスなどのライフサイクルは短く、価格競争の激化、付加価値の創出といった過当競争により、市場の動きは人間の直感的判断を裏切る振る舞いを示す。

こうした状況下で企業はイノベーションによるコストダウン、付加価値の付与といった努力を継続するが、SOAのような共通基盤としてのITはイノベーションの成就する時間に大きな影響を及ぼす。このタイミングが成長の立ち上がる市場ボリュームの大きな時期に間に合うかどうかにより、利益は大きな変動を受け、その後の企業活動に大きな影響を及ぼす。

イノベーションイネーブラーとしてのITの活用の巧拙が企業の命運をどのように左右するのか、その様子をモデリングする。

プロセスマネジメントによる販売の効率化

小池昇司(RICOH ELEMEX CORPORATION)

目的と概要:販売プロセスをモデル化し、セールスとマネジャー及び組織間の相互のコミュニケーションを効果的に制御することにより販売効率を上げた事例を報告する。

販売施策決定に先立って,販売プロセスマネジメントのシステム・ダイナミックス・モデルを作り、仮説としての施策と効果をシミュレーションする。施策はBSCのフレームワークにより組織展開される。施策の実施にあたっては、オンラインコミュニケーションにおける販売進捗の発展過程を可視化する。

フィードバックされた知識がすばやく共有化されることにより、販売関与者の行動が変わり、結果として進捗が加速される。関与者が販売を支援し、進捗を加速するマネジメントのモデルを仕組みとして定着化することにより効率化するための知見を紹介する。

CO2削減インセンティブプログラムのシミュレーションモデルの開発

堀野 聡(日本ヒューレットパッカード株式会社)

目的と概要:日本HPのBlade Pay Per Use CO2削減インセンティブプログラムは、サーバの省電力機能によりセーブできたCO2量に基づいて、月額リース料金を割り引くというシステムである。

このプログラムを顧客に提案する際には、本プログラム利用時の顧客での月額リース料金予測値を提示する必要があった。

しかしながら、このプログラムでの顧客ITシステムの負荷に対する最適リースサーバ数とその際の月額リースを予測することは、以下のような理由により困難であった。

・相互に関係する複数のファクタが存在し、最適値算出のためにはファクタ間の調整が必要である

・リース料金算出のアルゴリズムが非線形の関数に基づいている

今回、システムダイナミクスを使用したシミュレーションモデルを構築することにより、これらの予測が行えるようになった。

 

2.政策分野

反少子化戦略に関するSD人口モデルの意義と政策科学への貢献

小林秀徳(中央大学)

目的と概要:故島田先生の遺言とも言うべき人口モデルの継承を果たすことを第一の目的とし、少子化に対して戦略的に取り組むことが政治の日程に上る昨今の情勢を好機として、システム・ダイナミックス・モデリング&シミュレーションのあるべき姿を示す。

死亡率と出生率ですべてが決まることを理由に「人口は予測可能」という思い込みが生じると、それに拠る常識の形成が、輿論を形成し、政府の迎合に依る「戦略的」対処を方向付けてしまう、という政策決定の行動学的連鎖を追跡することに拠り、因果ループが社会的フィードバックを経る結果として、極めて不安定な変動性をもたらすことを、モデリング&シミュレーションに拠って明らかにする。

3.SD/ST分野

寿命分布を伴うストックとフローへのシステム・ダイナミックスモデルの適用

重野芳人(東北大学大学院)、秦燕春(東北大学大学院)

目的と概要:寿命分布を有するマテリアルフロー解析は、一般的に化学工学分野で発展したpopulation balance 法を用いて行われる。この方法は社会科学の解析手法としても使用され、例えば電化製品の流通寿命の解析等に応用されている。ただし、市場における実際の耐久消費財のフローはこれよりも遙かに複雑であり、例えば通常はリサイクルを伴う循環流であり、また製品や物質の一部は別の製品のリサイクル循環に入る場合もある。このように複雑なマテリアルフローの解析はプログラムによるよりも、システムダイナミックス汎用ソフトを利用し計算した方がより柔軟に対応可能である。

しかしpopulation balance法は離散値を扱うため、システムダイナミックスの汎用ソフトでは適用が困難であり、ほとんど利用されなかった。本研究では汎用ソフトStella/i-thinkの「オーブン」の機能を利用し、連続値を年ごとの離散値に分離し、これに寿命分布を適用するアルゴリズムを考案した。この方法による結果を従来のpopulation balanceによる計算結果と比較し、本方法の妥当性を検証し、より複雑なフロー解析へ応用可能な手法を提案した。

日本におけるSD研究と新しい方向性の考察

末武透(日本未来研究センター)、池田誠(東洋大学)、中村州男(NPO情報化ユートピア)

目的と概要:これまでの日本におけるSD研究や普及・啓蒙の歴史を振りかえり、現在行われているAHPの取り込みやマクロ・ミクロ・リンケージなど新しい試みを紹介する。

日本にSDが紹介されたのは、SDが米国のフォレスター教授によって確立されてからそう間もない頃であった。フォレスター教授のマイルストーン的な著書が発刊されると、次々と、東京大学の石田晴久教授らによって翻訳され、また、SDに関する普及・啓蒙を目的とした研修などが精力的に実施された。

このことを受けて、NTTや関西電力などの大手企業や、宮城県、千葉県、神奈川県、兵庫県、滋賀県などの地方自治体がSDモデルを構築し、シミュレーション結果を長期経営計画や政策策定に活用することも行われた。

1990年代に入り、明治大学の島田俊郎教授の提唱により、国際システム学会日本支部が設立され、SD研究やSDに関連するトピックスに関する研究発表が行われ、現在も継続している。

本稿では、日本におけるSDの啓蒙普及や研究の歴史を振り返り、さらに、現在行われている、AHPの取り込みや、水道モデルを例に、マクロ・ミクロ・リンケージを考慮したコミュニティ開発とミレニアム・ゴール達成の関係のモデル化の研究など、新しい試みを紹介し、今後の研究の方向性の考察を試みた。なお、現在、本テーマに関して、マルチエージェント・シミュレーション(MAS)による検討も加えているので、SDとMASとの関連性に関する考察も行う。