1999年3月号  目 次:1999年1月〜12月)

定例研究会報告
12回ナショナルモデル研究会の報告は、以下の通りでした。

報告テーマ:「産業連関ダイナミックモデルの国際リンク」
報 告 者:篠井保彦((財)国際貿易投資研究所 研究主幹)
  時:1999220日(土) 13:3017:00
出席者数: 18
はじめに

国際貿易投資研究所は今年で10周年を迎える研究機関である。私自身は、JETROで欧州関係の調査を行っていた。その後、この研究所に移り、8年前からずっとこのモデルの研究に従事し、中大の今川健教授、長谷川教授と3人の協同研究で、各国モデルのうち日本モデル(JAID)の開発を担当してきた。

1. 世界モデル (BTM)

現在、各国モデルとしては、米国、カナダ、メキシコ、豪州、ベルギー、仏、独、西、伊、英国、日本、中国、韓国の13ケ国ある。これが、BTM: Bilateral Trade Modelというセンターモデルに繋がっている。BTMがセンターにあるというイメージになる。各国モデルは、それぞれの国の機関に開発や改良が委ねられ、世界的にINFORUMグループを形成し、相互連絡や情報交換を行っている。中心になっているのはUniversity of MarylandClopper Almon教授のINFORUMInter-Industry Forecasting at the University of Marylandである。

ノーベル経済学賞のレオンチェフが、ハーバード大学で産業連関表を研究してきて、何とかstatisticsなモデルにdynamicsを取り入れられないかと工夫してきた。その後、レオンチェフはメリーランド大学に移って、INFORUMを設立し、今では連邦政府から産業連関表作成を委託され、これを基に経済予測を発表している。Clopper Almon教授はレオンチェフの弟子である。

BTM120部門16ケ国地域のバイラテラル・トレード・マトリックスの世界貿易モデルで、各国モデルとは、輸入、資本ストック指数、輸出価格指数でのみ繋がっている。この3つの値が各国モデルとの間でキャッチボールされるようなイメージになる。

2. 日本モデル(JAID)

日本産業連関ダイナミック・モデルJAID: Japan Interindustry Dynamic Econometric Analysisを例に、各国モデルの基本構造を説明する。各国によって部門数が違っていて、日本は102部門、米国は64部門、中国は60部門だが、部門数の違いの調整はBTMで実施されている。

基礎となるデータ・ベースは1980年〜1995年までの時系列の産業連関表で、推計については、1997年まで発表されている政府の延長表を1997年まで使用し、それ以降は回帰方程式によって推計している。

モデルの構成は、?102部門の中間投入係数、9部門の最終需要推計から算出される実質生産額の推計、7部門の付加価値(名目)の推計から算出される価格デフレーター推計から構成される。過去16年分のデータから中間投入係数が変化率を回帰を使って推計し、102のマトリックスに展開する。次いで最終需要(実質)を、家計消費、家計外消費、政府消費、民間設備投資についてコンポーネント毎に産業部門別に推計し、その合計である最終需要計と中間投入係数により実質算出額が求められる。ここで、輸出はBTMとやり取りした輸出需要、世界市場価格(輸入価格)から推定したものを使用している。輸入は、国内総需要に対するシエアを関数として推定している。公的総固定資本形成及び在庫変動は外生している。

続いて付加価値額(名目)をやはりコンポーネント毎に産業部門別に推計し、その付加価値計を実質算出額で割ることで単位付加価値額とし、中間投入係数から価格を推計している。ここでも、雇用者所得、営業余剰、固定資本減耗引当、間接税、補助金のそれぞれに関数を設定してパラメータの推定を行っている。

産出額(実質)と価格は反復計算の収束演算によりバランスさせている。収束計算のアルゴリズムは各国に任されている。日本では、GDPの成長があまり大きくならないような制約や労働生産があまり高くならないような工夫がこらされている。

3. モデルのデモ

BTM989月にやっと完成した。日本でモデルを入手したのは99年1月で、今回は中央大学でのデモに引き続き2度目のデモとなる。

もともとのプログラムはFortranで記載されていて、DOSで稼動していたが、Almont先生の元に来る学生が、DOSFortranも知らない世代になったため、WindowsC++に移植している最中である。まだ、英、米モデル等は古いままである。日本モデルや中国モデルはC++に書き換わっている。

参考文献:

The Craft of Economic Modeling ? by Clopper Almont, 1995

・「JIDAモデルの概要 - The Model of Japan Inter-industry Dynamic Econometric Analysis

(日本産業連関ダイナミックス計量経済分析モデル)平成8年4月、(財)国際貿易投資研究所(ITI)

 

編集後記

 花の便りも聞こえるような良い季節になりました。事務局では新名簿作成中です。住所登録等お済みでない方はお早くお願いします。