事務局からのお願い
支部会員名簿の更新の時期になりました。定例研究会報告
同封の葉書にて所要事項ご記入の上、3月15日までに、事務局までご返送下さい。
名簿記載事項に変更のない方もお手数ですがご記入・ご返送下さいますようお願い申し上げます。
第75回定例研究会の報告は、以下の通りでした。
報告テーマ:「政策研究の動学的展開 -エクセルシステムダイナミックス-」
報 告 者:小林秀徳(中央大学教授)
日 時:1999年1月16日、午後1時半〜4時
出席者数: 11名
発表概要:
経済低迷が続いていて、99年度はさらに悪くなると予想されている。かって、日本を称して「経済は1流だが、政治は3流」と評されたことがあったが、現在は経済も3流に成り下がっている。こういった元気のない日本の今の現状に対して、SDとして何かできないか、そして、政策科学の立場からも何か提案をしたいと思い、昨年末に本を書いた。春の出版を目指して出版社と交渉中だが、この本の中から、いくつか紹介したい。
1. 出版の3つの目的
本書は3つのねらいを持って書かれた。
2. 基本的な政策提言とそのモデル
主に第1章に政策提言を書いた。ここでは、日、米、英、仏、独の主要5ケ国を中心に形成された世界モデルを用いている。アジアはその他として取り扱い、この5ケ国と直接相互依存を行なうようなモデル構造として組み込んでいない。5ケ国は相互に貿易と資本外部効果のみで繋がっている。また、マネーゲーム的な投資関係は除外している。
このモデルは、所得水準の変化によるギャップを認識して埋めるマクロのプレーヤーがいないという前提で組まれている。すなわち、その直接的なプレーヤーはいなく、個々の投資家にミクロの決定として委ねられる。しかし、結果として、あたかもマクロのプレーヤーによりギャップを埋めようとするような動きを示す。個々の企業経営者のランダムな動きの全体が、指数遅れのモデルでうまく表現できる。
この5ケ国の相互依存モデルでシミュレーションを実施してみた。所得水準(実質GDP)のみに注目してみると、低成長時代には逆S字型カーブになり、5ケ国で同じような形をしている。そして、2001年をピークとする成長が見られることが見て取れる。実際の経済成長もGDP、すなわち、為替変動による変動を除いてみた成長とよく合う。1997年の日本の値は、このシミュレーションの曲線から下回るが、これは、政府の間違った政策、すなわち、不良債権の早期回収政策により、設備投資を圧縮させてしまい、資本調達がうまくいかなく、設備投資が順調に行われなかったためと考えられる。
調整期間と調整方法には密接な関係があり、調整期間が長いほど安定し、遅れの長さが短いほど安定する。この点から、日本は、バブル後の過剰信用、過剰在庫を、悪い時期に下向けるような間違った政策をやってしまったことになる。まず、公共投資ではなく、生産を高めるようなプロジェクトにもっと投資を行なうべきであった。
3.指数遅れ
指数遅れの問題も、今回のシミュレーションで面白い知見を得た。すなわち、指数遅れは、高次になってもそれほど大きな影響はない。多段階性はシステムの変動を高める。また、遅れの部分に多段階性が生じた場合や調整期間内に多段階性が生じた場合、変動性は増すが、指数遅れが5次の場合も50次の場合も、そう大きくは変らない。これを規制緩和と置き換えて考えてみた場合、規制があるか無いかでは大きな影響があるが、規制緩和を中途半端に実施して、規制を減らしてもそう大きな影響はない。全廃か規制かしかないことになる。
4. 残存率モデル
指数遅れに関し、従来の人口モデルは適切ではないかと思うようになった。それよりも、残存率モデルの方が有効ではないかと思い、新しい人口モデルを提唱した。
従来の人口モデルは、年齢帯別に区切って、それが上にシフトしていくというモデルであった。しかし、こもモデルでは、劣化という観点からの個人特性があまり考慮されていなく、加齢により一様に劣化するものという前提でモデルが組まれていた。しかし、人間の場合、病気等で人の体の特性が変り、それが遷移していって、最終的には致命的な故障で死を迎えるというモデルの方がいいのではないかと考えている。従って、身体的年齢が問題で、20代でも肉体的年齢は80才ということもあれば、80代でも肉体的年齢は20代ということもある。そういった人にはそれ相応に活躍できる場を与える方が適切であると思う。
5. SDモデル・シミュレーション実際の政策決定の場で用いる際の参考となる例を示す
この点に関し、基本的なモデルを取り上げ、さらに、それを使ってマネジメントプロセス、ベンチャー企業経営、証券市場を解説した。そして、中小企業が一致団結して今後の日本を切り開いていく必要があり、それを支えるような、政策が必要だということをこの本の中で述べた。現在の日本では、中小企業が、必要な設備投資資金を調達できなく、それが日本経済成長の足枷になっている。政府は、こういった状況に対して、うまく中小企業が資金調達ができる方策を実施すべきだが、現実には、不良債権回収を3月迄に行なわせるといった、反対の行動を行なっている。モデルでのシミュレーションでも示したように、調整期間を長くする方策を採択すべきである。
モデル・シミュレーションが簡単にできるような手段の提供として、エクセルという表形式をベースにしたSDプログラムソフトを提供し、出版する本に付録として添付しようかと考えている。
6.企業経営へのSDモデリング・シミュレーションの有効性
本書のねらいとして、企業経営にも有効な手段として、SDを訴えたいと考えている。そのため、本書の後半は、企業経営に力点が置かれた解説になっている。
編集後記
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