ビールゲーム(Beer Game) |
概 要
ビールゲームは,システムダイナミックス(System
Dyanmics: SD)を学習するロールプレーイングゲームである。当初は,「生産流通システムゲーム(production
distribution game)」と呼ばれていた。「ビール」というのは,勉強し過ぎの典型的なMIT大学院生に,このゲームは勉強ではないと思わせる一つの工夫とも推察される。好都合にも,ゲームのトークンに使うコインは,形がビールとイメージが重なる。ゲーム盤には「工場」・「一次卸」・「二次卸」・「小売店」の役割があり,参加者はチームとなって各ビールゲーム盤に向かい勝敗を競う。しかし,このゲームの本当の目的は勝敗にはない。ゲームの参加者が,一つの複雑なシステムの意思決定を分担し相互に圧力を感じながら自らの意思決定を遂行するロールプレイングを通して,人間の合理的な意思決定がフィードバック情報の誤認のためにパラドックスを引き起こす過程を体感する。こうして,「システムの内的構造が行動を生む」というSDの大原則と共にシステム思考とはどういうものかを体験的に学習し、SDへの入門的な役割を果たす。ネットワーク対応のWindows用ソフトPowersimでは、ビールゲームの各役割を各パソコンで分担できる。
この日本語版ビールゲームキットの無償公開につきましては、1995年ごろより国際システムダイナミックス学会財務担当理事(当時)Julia S.Pughさんに照会して著作権上の問題がないことの確認をして頂くなど過年に渡り大変お世話になりました。その後、個人的な事情でMacからWindowsへの変更でファイル整理が遅れ、公開がかろうじて20世紀の最後になってしまいました。心からお詫びいたします。なお、日本語版ビールゲームキットの作成と公開では当初より、島田俊郎初代日本支部長(明治大学)および亀山三郎前日本支部長(中央大学)より貴重なご助言を得ましたことをここに記します。(2000.12.28 黒野宏則(広島県立大学) )【ビールゲームキット】
追記:JSD事務局長松本憲洋さんに版権等についての照会がありましたので、System Dynamics Society事務局長Roberta L. Spencerさんに再度確認しました。それによりますと、 ビールゲーム(Beer Game)は、パブリックドメイン(the Public Domain:社会の共有財産)です。英語版・日本語版共、教育や企業等の研修に自由に活用され、システムのダイナミックスの理解と組織学習の向上にお役立て下さい。(2005.10.12 黒野宏則)
1 ビールゲームキットの内容(A4) | 2 ビールゲームの説明(A4) | 3 ビールゲーム盤ぬり絵(A3) |
4 ビールゲーム盤の組立て方(A3) | 5 ビールゲーム盤カラー(A3) | 6 記録シート(A4) |
7 注文グラフシート(A4) | 8 在庫と受注残のグラフシート(A4) | 9 [シート説明補足]受注残を中心に(A4) |
1 ゲームの修正ステップ(A4) | 2 改訂版ビールゲーム盤カラー(A3) | 3 記録シート1(工場)(A4) |
4 記録シート2(一次卸)(A4) | 5 記録シート3(二次卸)(A4) | 6 記録シート5(小売店)(A4) |
「構造的動的モデリングによる社会システム論の構築に向けて:「ビールゲーム」実験から得られたこと」
黒野宏則 (執筆当時:九州国際大学)「SDモデリング環境の現状とリエンジニアリングへの適用例」
日高昇治(執筆当時:NTTデータ通信株式会社)
なお、ここで、ロンドンビジネススクールのJohn Morecroft先生に、心よりお礼を申し上げます。二人は、別々の機会ではありますが、モアクロフト先生のもとでビールゲームを学び帰国しました。黒野は先生がDirectorを勤められるExecutive Education Programmeでビールゲームを初めて学び、日高は先生の指導のもとでMBAを取得しました。先生の本当に温かい眼差しのでの明確なご指導がいつまでも心に残り、そのことがやがてこれらの論文へと結実されたのです。